帰ってしまったか。
話ってなんだったのだろう。
帰ったということはたいしたことがないのだろうが。
苦笑いを誤魔化すためにグラスを口に運んだ。
だが、そもそもどうしてここに現れたのだろう。
どうやって入ったのか。
入口付近や会場に数多く潜んでいるボディーガードの目を盗んで入れたとは思えない。
どうやって正式な招待状を手に入れたのだろう。
綺樹は柔らかだがきっぱりと周りを振り切ると、サロンを出た。
扇のように広がっている階段の上から、未練がましくホールを見渡す。
そしてそのままぼんやりとしばらく突っ立っていた。
綺樹の様子にボーイが声をかけてきた。
綺樹は何の期待もなく、涼の風貌を告げて見かけたか問うた。

