会場がザワついていることをいい事に、堂々と体育館へ入っていくアタシ。
誰も気づいてないみたいで、誰一人としてコチラに目を向けなかった。
ラッキー。
適当に空いてる席を選んで腰を下ろす。
新入生席はステージ側、つまり前の方にあるんだけど、それでも注目を浴びることはなかった。
どんだけー。
パイプ椅子なもんだから少し『ギシッ』って音がした。断じてアタシが重いから音がしたんじゃない。たぶん。
周りを見渡すとザッと800人はいるだろうと推測。目分量だから確かじゃねぇけどな。
でもドデケェ体育館なもんだから、すっかすかな場所が目立つ。空席もだいぶあるみてぇだな…。
なんつー素行の悪い学園だ。
アタシみてぇな真面目ちゃんになれよなー。…なんつって。
にしても、
「どいつもコイツも喋ってばっかだな。ンな緩(ゆる)い学園なのかよ」
先生も誰一人注意なんざしてねぇ…し………って、そもそも先生いなくね?
え、どーなってんの?
アタシが一人混乱していると、不意に後ろから声をかけられた。
「お前さ、まさかこの学園に『普通』でも求めてんの?」
「は…?」
振り向くとそこには男子生徒がいて。
後ろの新入生席に座ってるっつーことはコイツも同じ新入生ってか。
つーか普通を求めて何が悪…い……。
…………。
コイツ…
「……厨二?」
「はっ、おまっ…別に俺、厨二とかンなんじゃねぇーしっ?!」
「………。」
う、わー…。
アタシの後ろに座っているコノ男子生徒。一見すると『普通』な感じなんだけど、さ…。
「…お前さ、その包帯どうしたんだよ」
「や、ちょっと骨折したっつーか、捻挫したっつーか、うずくっつーか…」
「ああ成る程つまり厨二なワケなん「べっつにチゲーしっ?!」」
ンなあからさまな態度とんなよ。
余計厨二さが増したな。


