「教室に鞄はあったから、探しちゃった」


「そうなの?ごめんね」


「いいのよ。……アタシが姫に逢いたかっただけだから」


「──えっ!?」


逢いたかった、なんて言われて、また心臓が飛び跳ねる。

きっと、
深い意味なんてないのだろう。

きっと、
またからかっているだけだ。

いろんな言い訳を考えた。


「図書室、勉強しやすいものねェ」


「……あ、うん」


「静かだし、本も好きだし、だからアタシ図書委員になったのよね」


「そうなんだ」


「ええ。結構仕事も楽なのよ」


私は中途半端な時期に転入してきたから、前期はどこの委員会にも所属していない。


ふと横を見れば、頬杖をついてニコニコとこっちを見つめている王子と目があった。

最近このポーズの王子をよく見る。癖、なのかな?


王子は──、

とても優しい瞳をしていた。


そんな瞳で──…
見ないで欲しい。

あまり──…
揺さぶらないで欲しい。


自分の気持ちが、分からなくなる。


王子は……友達、だよね?