乙女系王子様

「奈留の……元カノ」


「───かの、じょ」


衝撃に、息が出来なくなった。

どくどくと鼓動が早くなる。


「……ああ。中二の頃かな、付き合ってたんだ。アイツは、奈留のことをすごい束縛してた…可愛い顔して自分を弱く見せるっていうか、守ってもらえることを知ってる奴だった」


なにも言えず、拓真くんが話すのを静かに聞いているしか出来ない。


「奈留も奈留でアイツのこと好きだったみたいだけど…まあ、いろいろ気付いたんだろうな。別れるって言ったんだ。……だけど、別れなかった」


海ちゃんもさっきからずっと元気がなく、しゃがんで俯いたままだった。


「アイツが、別れたくないって喚いたんだ。それくらい、奈留のことが好きなんだと思ったよ。───でも…」


「……でも…?」


言葉を切った拓真くん。

怒りと悲しみが混ざったような表情をしていた。