乙女系王子様

「…なんで……」


思いがけない人物に動揺する。

4、5人の男を連れている女──…中学の同級生だった。


「なんでって…こっちの台詞なんだけど。どうして泣いてるのー?……あ、ナルに振られたんだぁ?かっわいそー!ふふっ」


「なっ!…う、うるさい!」


袖で素早く涙を拭う。


顔を上げればミサは男たちに何か言っているようだった。

男たちがミサから離れて、どこかへ歩いていく。


「ねぇ、ナルのとこに連れてってよ。一緒に来てるんでしょ?」


「───は?」


「聞こえないの?ナルに会いたいの」


この女は、何を言っているのだろう。


──いや、昔からそうだった。


「な…んで…私が……」


「うるさいなぁ、あんたの意見なんて聞いてないのよ。ホラ、早く行こ?」


ミサが、にっこりと笑う。


自分のことしか考えてない女。



あたしが、世界で一番、ムカツク奴。



( side 海 end )