乙女系王子様

「痛ッ…ちょっと、海?なにす──」


「ありがとっ!」


王子から身体を離して、ぷいっと顔を逸らす。


「…ええ……ありがとう」


「………ん」


呆気にとられていた王子だが、すぐに優しく笑ってくれた。


これで──…いいんだ。


いつまでも見ていたって、王子は振り向いてくれない。



多分、王子のことだから気付いていたとは思うけど…、


言っておきたかったから。

伝えたかったから。


本当は、姫乃の地元にみんなで行ったときに言うつもりだった。


嵐をせっついたのも、自分自身を奮い立たせたかったから。