***

( side 海 )


「海?どこ行くの?」


「………んー」


この辺でいっか…。


あたりを見回して、知り合いがいないことを確認する。


王子の顔を見れば、不思議そうな表情をしていた。


まあ、そりゃそうか。


「……かた」


「ん?」


「浴衣!どうかな?似合う?」


「──ええ、似合ってるわよ」


にっこり微笑む王子。



だけど──……


そんな、微笑みが、言葉が、欲しいわけじゃない。



あたしが欲しいのは、


もっと特別な──もの。