乙女系王子様

「西宮の生徒さんだって?すごい偶然だね。はじめまして、小林といいます」


「──えっとねぇ…みんなには内緒にしてたんだけど──実は、結婚してるの」


美咲先生がちょっと照れくさそうに、そう──…告げた。


け…けけけ…、け…

けっこんーーッ!?

えっ、せ、先生…結婚してたの!?


ふいに気配を感じて振り向けば──なんともお約束というか──拓真くんが呆然と立っていた。


「あ……拓真…くん…」


「……………」


そのまま何も言わず裏へ去っていってしまった拓真くん。


「……?成瀬くん?どうしたのかしら」


「いえ、何でもないと思います。じゃあ、ごゆっくりどうぞ。先生、また学校でネッ」


「はーい、みんな、頑張ってね」


にこやかにそう答えた王子と、笑顔で手を振る美咲先生。

私も小さく手を振り返して裏へ回る。


「……失恋ね。可哀想にィ」


王子がぽそりと呟いた。

可哀想に、と王子は言ったけど、その口元に笑みが浮かんでいた気がしたんだけど…き…気のせい…かな…?

気のせいだよね!!