「び…っくりしたぁ」


「あら──ごめんなさいね。眠れないの?」


「んー……ちょっと…でも今、寝ちゃいそうだった」


えへへと笑ってそう言えば、王子が目を細めて、静かに笑った。


「そう……じゃあ、部屋に行って寝たほうがいいわね」


王子の手が差し伸べられて、私はその手を取った。

その手はひんやりと冷たくて、なんともいえない気持ちになる。


「王子も……眠れないの?」


「──え?ああ……いえ、ちょっと喉が乾いただけよ」


歩いていた王子がちょうど暗い陰から光が差し込むところへ出て──…月明かりに照らされた王子の横顔は、ぞっとするほど美しかった。