まひるは慌てて、ハンカチを私物入れから取り出すと智房に被せた。

しかし、今はまだ3月初旬で冷えているのでハンカチをかけただけでは寒いと判断したまひるは


「課長・・・ちょっとだけ体に触れちゃいますけど我慢してください。
それと、こうなっちゃった以上ここではいられませんから、課長の持ち物と課長は我が家へ持ち帰ろうと思いますけどよろしいですか?」


「持ち帰るだとぉ・・・。おい、俺は物じゃないんだぞ!は、は、ハックシュン!」


「でも、この姿をみんなに見られてもいいんですか?
ここにいたら大騒ぎになっちゃいますよ。

それと、今の課長にたぶんぴったりの服も家にもどればあると思います。」


「まさか俺に○○人形の服を着せるとか言うんじゃないだろうな。」


「人形はもっとちっちゃいのしか作ってないからいませんけど、服は少しお時間いただければ、ちょいちょいっと作りますから安心してください。

で、とりあえず失礼します。」


「お、おい、茗花!あっ・・・どこ触ってる!こらっ。」



「すみません、風邪が悪化しちゃいけないので、ハンカチを体に巻いています。それから私も着替えて帰宅しますから、移動中は私の私服のポケットに入っていてください。」


「わ、わかった・・・。」



まひるは私服に着替えると上着の内ポケットへと智房を入れた。


「きゃっ!課長、あの・・・そ、そこは私のおっぱいの上なので足を動かさないでほしいんですけど。

くすぐったいので、じっとしててください。」


「じっとしろって言われても歩かれるとユサユサこっちも振り回されてしまうんだ。
もうちょっとおとなしく歩けよ。」


「もう、小さくなっても文句は多いですねぇ。」



「おまえに俺の気持ちがわかってたまるか!」


まひるは自宅のマンションにもどると、すぐに簡易的に着られる小さな服を作った。


「課長、これでお部屋着くらいにはなるでしょうか。

続いて、外出着もお風呂のあとで作っておきますから、まずはゴハンとお風呂をすませましょう。」


「お、おれはおまえと風呂なんて・・・。」


真っ赤な顔をして背中を向けて黙りこくってしまった智房を見て、まひるはかわいくてかわいそうになってしまった。


「課長専用のお風呂場を用意しますね。ついでといってはなんですけど、とりあえずのおうちもありますよ。」


そういって実家から持ってきたマジックファンタジーハウスを見せた。


「これは・・・?」


「私が作ったんです。あはは・・・おたくな趣味ですみません。
でも、今の課長にぴったりみたいですよ。

はい、これを浴槽に使えませんか。電子レンジ用の容器ですけど、すぐお湯も沸かせます。」


「沸かすのはいいが、俺ごと電子レンジに入れるなよ。」


「わ、わかってますよ。そんなひどいことしませんってば。
あれ?か、課長・・・どうしたんですか?」


「なぁ・・・茗花んち、いや、このマジックファンタジーハウスか。
ここに当分厄介になるのなら、もう俺は課長じゃないよな。

きっと行方不明になって、みんなに迷惑をかけてしまうな。」


「課長・・・。元気を出しましょう。
私、謎の声を聴いたんです。
冒険者を私がサポートしながら、何か目的を果たせばすべて元にもどるみたいなんです。

そして冒険者っていうのは課長です。私はサポートするために任命されたみたい。」


「冒険だと・・・。まだ信じられないが・・・けど、戻る方法はそれしかないってことなのか。

くさっていてもしょうがない。それにおまえがサポートしてくれるというのなら・・・。

あのさ、これからなんだけど・・・俺のことは名前で呼んでくれていい。
この姿じゃ、課長なんてありえないしな。」


「とも・・ふ・・ささん?ん~~~~なんか言いにくいし合わないかも。
あっそうだ。トムでどうですか?勇者トムです。」


「なんで勝手に勇者にするんだ!もう、いい。なんとでも呼んでくれ。」