ナミリハ王女をパーティー会場へと連れていくために、出かけようとした智房に至急通達がとびこんできた。


「うぉ!合格通知じゃないか。
このタイミングでか・・・妙に早いな。
なんとなくいつきの仕業っぽい気もするが・・・まあいい。

これで今日は堂々とまひると王女の相手ができるな。」


上機嫌で智房がナミリハ王女を迎えにいくと、ナミリハは少し驚いた様子だったがすぐに智房へ祝辞が述べられた。

会場へ到着し、車から車椅子へと智房が王女を抱きうつそうとしたとき、ナミリハは智房に両腕をまわしたまま智房の唇にキスをした。


「う・・・王女!」


「どう?まひるにイジワルしてやったわ。うふふふ。」


智房がハッと左斜め後ろを振り返ると、まひるがムッとしてにらんでいた。


「やられた・・・。」


その後、智房がまひるに嫌味をたらたら言われることになってしまったのは言うまでもない。


まひるの機嫌がやっとおさまってきた頃、第一王子つまり皇太子がまひるに挨拶をしてきた。


クスクス笑い続けるその笑顔になんとなく見覚えがある。


「思い出したかい?コウキだよ。」


「お、王子さまーーー!どうして?まさか王子様も時空の魔法で??」


「いや、確かに君の空想世界に僕は存在したけど、それはいつきが作ってくれたプログラムだよ。
僕をモデルにね・・・。」


「あ、そういうことですかぁ。びっくりしたぁ・・・。」


「あのときと似た魔女衣装だね。神秘的でよく似合う。
それに君は足がきれいだからね。」


「きゃっ・・・ちょっとスカートが短かったですか。
あははは・・・おはずかしい。」


今度は智房がまひるを遠目ににらみつけていた。

そんなとき、ナミリハが皆を前に車椅子から自力で立ち上がって場を驚かせていた。

智房のがんばりに感化されてナミリハも必死にリハビリをがんばっていたというのだった。

「そうか・・・歩けないわけじゃなかったんだね。」


智房とまひるがナミリハに近づいていこうとしたとき、ナミリハがバランスをくずして、前につんのめって倒れていった。


「いっ・・・!あれ・・・?」


目を手で覆った人が多かった中、ナミリハを床の上で受け止めていたのは菘家の三男のうきはだった。


「無事か?かるっちぃな・・・王女様は。」


「あなたは誰?やたら大きいのね・・・。それに無礼な口のきき方ですわ。」


「ごめんな。俺はいつもタメ口なもんで・・・今日ここにいるのは警備担当でいるんだ。
王室警備隊長を任された、菘うきはだ。怪我はないか?

無理をして足首をひねったら取り返しがつかね~だろ。」


「だって、私・・・殿方たちがおらえるテーブル前のスペースまで歩いていくのが目標だったんだもん。
がんばろうって昨日、決心してたんだもん。」


「そっか。じゃあ俺が腕1本貸してやるよ。
つかまって移動するといいよ。俺は頑丈だからな・・・。」


「うん・・・うきははいつきの弟?」


「そうだよ。」


「王宮の警備をしてるの?」


「ああ。腕っぷしには自信があるからな。
もちろん、頭脳もいつき兄さんには負けるけどいい方だと自負してるぞ。」


「ふふっ・・・ほんとに頑丈ね。
あのね、よかったら・・・少しでいいんだけど、私と踊ってくれない?
実際にはできないから真似事でいいの。

お仕事があるから無理?」


「じゃあね、ちょっと部下に警備を代わってもらうように言ってくるから少しだけ待ってくれるか?」


「はい。」


それを見ていたまひると智房は顔を見合わせて笑った。