今さらながらに私は、自分がどれだけ恥ずかしい発言をしたのか、身に染みていた。

やっぱり私は、前のめってたみたいです…と心の中で真衣子に語りかける。

顔が熱い。

どうとりつくろえばいいんだろう。



「俺のBは、イニシャルだよ」



ふいにかけられた声に、えっと顔を上げた。

焼き鶏の串を手にしたB先輩が、面白そうに私を見る。



「…なんて仰るんですか?」

「バン」

「バン先輩?」

「バンリ」

「バンリ先輩ですか、苗字は?」



気がついたら正座で先輩に向きあって、私はいきなり飛び出した先輩の本名に、すっかり興奮していた。

そんな私を落ち着かせるように、先輩が笑う。



「バンが苗字、名前がバンリ」

「…バンバンリ?」

「ふざけてるだろ」



グラスの滴を使って、先輩の指がテーブルに文字を書く。


伴万里。



「そーいや、そんな名前だったな」

「Bで十分だろ、こんな奴」



いつの間にか聞き耳を立てていた数人に、うるさいよ、とのんびり抗議する先輩が、水滴の字をさっと払って消した。

でも私の目には、その形が焼きついていた。


伴万里。


フルネームだと確かに変わってる。

B音が重なるインパクトが強すぎて、こんなあだ名になってしまうんだろう。

だけど、こんなに似合う名前もない。


伴先輩。

万里先輩。


口の中でつぶやいてみたその名前は、おこがましいような、照れくさいような感じで。

私はきっと、本人を前にしては呼べないだろうと思った。