涙が頬を伝って、枕に落ちた。


先輩、今どこにいますか。

会いたい。

会いたい。



手紙の最後にも、署名すらない。

彼の口から聞いたのも一度きりの名前。



果てなく続く、悠久を意味する言葉。

移ろう時の流れを、じっと佇んで見守っているような。



誰も呼ばなかったのに。

その名前は、彼に似合いすぎる。





万里。





先輩、いつか。

あなたが当たり前に、この名前で呼ばれる日が来ることを。


祈っても、いいですか。








…――謝りたいことが、たくさんあります。

だけどまずは、僕の話をします。


僕は以前見せたあの海辺の家で、木暮家の長男として産まれました。

公務員の父と、家庭的な母の間に産まれた僕は、伴の姓を継ぐために、産まれてすぐに母の兄夫婦の養子となりました。

その直後に伯父夫婦は男の子を授かり、その子が産まれると、僕は伴の籍にいる必要がなくなりました。

だけど、たびたび籍を移すのも気の毒と思ったのか、単に面倒だったのか、僕が木暮の籍に戻ることは、ありませんでした。


だから俺のイニシャルは、いまだにBBなんだよ。――…