『起きた?』

『…私、寝てましたね』



すぐ寝ちゃうよね、と優しい声が笑う。

机に向かう彼は、やっぱり手紙を書いていた。

裸のままだった私は、タオルケットに身をくるんで、そばまでいざり寄った。

私が特にのぞきこんだりしないことをわかってるんだろう、先輩は便箋を隠すこともなく、肩にもたれた私に、キスを落とす。



『あのね、たぶんちょっと、熱があるよ』

『私ですか?』



いきなりそんなことを言われて驚いた。

早く服を着て、ちゃんと寝たほうがいいよと言われて、その前にシャワーを借りたいとお願いした。



『こんなにあちこち、汚れるものだと思いませんでした』

『主に汚す張本人が、何言ってるの』



赤くなってうつむくと、先輩が笑って肩を抱いてくれる。

当然のように唇を重ねて、舌を合わせてくれる。

挨拶程度かと思ったら、なんの弾みか、その触れあいは妙に濃くなり、お互いの息が弾んだ。



『こういう、ぐちゃぐちゃになる感じ、俺は好きだよ…』



吐息にまざって、先輩のそんな声がする。

私も好きです、先輩となら。

肩に回っていた手が首の裏に移動して、やっぱり熱いね、と確認された。



『全然気づきませんでした…』

『自分のことって、意外とね』



そう言った先輩が、ふいにタオルケットの隙間から手を差しこんで、私の膝の裏あたりをなでる。

私はびくんと跳ねあがり、身体がじわっと温まるのを感じて先輩をにらんだ。

ほらね、と楽しげに笑う。



『こういうのが、いいよね』

『どういうのですか?』

『本人より、本人を知ってるみたいな』