それがわかるから、悔しい。

実際その程度だと自分で思うから、悲しい。


バカにして。

みんな、バカにして。

何を見せて、何を聞かせるべきか、決めてやらなきゃいけない奴だって、私をまだ思ってる。

手を引いてやらなきゃすぐ迷子になるって、思ってる。



「バカにして…!」

「してないよ」

「嘘、ほっとけなかっただけで、結局は相手にもしてないくせに!」

「俺がいつ、そんなこと言った!?」



また叩こうとした手を、つかまれた。

先輩の大声に驚いて、思わずぽかんとする。

すぐ近くにある黒い瞳が、ぎゅっと寄った眉の下から私をにらんだ。



「俺が、いつ、そんなこと言った…?」

「だって…」



だって、と食いさがろうにも、何を言えばいいのか思いつかない。

確かに、一度もそんなこと言われてない。

けど。

ねえ先輩。

それってどういうことですか。


一瞬だけ、何かを確認するように視線が絡んで。

お互い吸い寄せられるように、唇が重なった。

先輩の唇が私を甘く噛んで、すぐに離れていく。



「…子供だって思ってませんか」

「思われても仕方のないことする子だなとは、思ってるね」

「はぐらかさないでください」

「思ってないよ」



ほんとに? としつこく訊くと、苦笑が返ってきた。

優しい優しい、B先輩。

今夜だけ甘えてみても、いいですか。



「証拠、見せてください」



先輩がきょとんとする。

ぎゅっと先輩のシャツをつかんで、聞こえなかったふりを許さないつもりで、私ははっきりと言った。



「私のこと、他の人と同じように扱ってください」