だから思わず隣に座る蒼次くんを見た。


彼もあたしと同じように驚いていた。


そして誰にも聞こえないようにこっそりと話し始めた。


「ねぇ、
今のって…茜だよね?」

「あぁ。あいつは始めから、この場で言うつもりだったんだろうな」

「…何を?」

「貴之の真実について」


ゴクリと固唾をのむ。


決意を決めていた茜の表情が思い起こされた。


まだ彼女の姿は見えなかった。


けれど噂をするようなざわめきが起こり始めていた。


そして1人の女の子が舞台を上がり始める。


舞台に向けて一歩ずつ確実に階段をのぼる。


後姿の茜は凛々しかった。


「…茜」


舞台に立ち、マイクの前に立つ。


彼女を見た学生たちが驚きとともに嬉しそうなざわめきだった。


ざわつくのも無理はない。

なぜなら彼女はミスコンで騒がれた謎の美少女、張本人だから。


そして茜はゆっくりと口を開き、話し始めた。


「…ご卒業
おめでとうございます」


いつものように挨拶から始まり、先輩たちがいなくなってしまうということを話す。


内容なんて普通の卒業式の送辞と何も変わらない。


すると茜は急に話を変えた。


「…ここからは私本人の話になります。しかし皆様にも大事な聞いて欲しい話です」


それだけで私には分かるよ。

今、茜はまた一歩を踏み出したのだと。