客達の反応は悪くなかった。表面的には、あくまでもにこやかに話しかけてくれる伯爵夫人。知り合えて嬉しいと取ってつけたような微笑を浮かべる男爵令嬢。

 あからさまな関心の目を向けてくる若い紳士達もいたし、中には「どちらのミス・レスターかしら」といぶかしげに問う夫人もいたが、彼はまったく動じずに、さらりとかわしていた。

 ローズの方はさっきから心臓が飛び出しそうになっている。

 だが子爵家の親族達は、もっと露骨に詮索の目を向けてきた。

 特に先日、エヴァンにレディ・アンナとの縁組みを強硬に勧めていた叔母のウィルソン夫人は、ローズに最初から強い疑惑の目を向け、やがて何人かの親族とともに、子爵の周りを取り囲んでしまった。

 テーブルにはおいしそうなオードブルや七面鳥、幾つもの料理の皿が所狭しと並び、ワインのせた盆を手にメイドが行き来している。

 誘いかけてくる何人かの青年紳士からようやく逃れ、ローズは壁際の椅子に腰を下ろした。