「みんなに気付かれて止められるのも嫌だった。
だからこっそりと、近くのトイレで飲んだんだよ。
水筒のお茶で、沢山の睡眠薬をさ」
それで、この鈴木の姿をとった怪物の元であるーーーこの高校の生徒は、この教室で息をひきとったのだ。
いじめを苦にした自殺。
誰がどう聞いたって、それは明らかな事実である。
すると、
「ぼゔう」
鈴木の口から、なにか巨大な、真紅の塊が飛び出した。
「ひっ」
神崎がついに耐えかねて、悲鳴を漏らした。
眼前にいたのは、怪物だ。
全身に火傷を負ったような、爛れた身。眼球のない目のくぼみ。
口からはみ出た異様に長い舌。
その身から滴り落ちた真紅の粒は、ぼたり、とえげつない円を床に描く。
「う、わ、悪かった、謝る!
だから……!」
化け物は、もう聞く耳を持たぬだろうに、この八方美人ときたら、最後の最後までなんとかなると思考したらしい。
救いようのない男だ。
しかし、世の中と言うのは理不尽なもので、こんな性根の腐ったような男でも、命の危機に瀕しても救われてしまう場合がある。
「まてや‼」
吉郎率いる陰陽部一行が、教室に乱入してきたのだった。


