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「あの、鈴木さんは?」
翌日の放課後、さっそく鈴木を呼びに行こうと行動に移った晴也だが、
いつの間ーーー晴也がほんの僅かだけ細川に明日の提出物を教えていた間に、
鈴木の姿はなくなっていた。
ので、慌てた晴也は、こうして細川に助けを乞うているのだ。
「え?鈴木さん?
あの静かな子?」
「うん」
「出席番号が十五番から二十番の人は……今日は生徒相談の日じゃなかったか?
お前、昨日だったろ」
「う、うん」
「鈴木さんはサ行だから……
たぶん、いちばん最後の二十番じゃね?」
晴也は、細川がさりげなく口にした言葉に動揺する。
生徒相談は、懇談と違って生徒と教師が差し向かって、学校生活について質問を受けたりする。
そのため、場所としては静かな部屋で行われる。
「なあ、熱でもあんのか?」
細川が晴也の顔色を伺い、半ば本気で懸念してくる。
普段から軽めの調子の細川なだけあって、真剣になると違和感があった。
(生徒相談は、農業科の多目的室!)
吉郎曰くのーーー今はもう使われていない教室、である。
晴也は鈴木よりも前に生徒相談を受けていた。
だから、どこで相談が行われているのかを存じている。
そして、誰が担当をするのかも、だ。
(担当は、神崎先生)
鈴木が神崎に何かするといる兆しがあるわけでもない。
ましてや、その霊が悪霊とも限らぬし、よりによって神崎を襲撃しはしないだろう。
しかし、晴也は心配になった。
……なぜなら、晴也が「まさかね」とおもったことは、だいだい運悪く当たったりするから、である。
やらないよりはまし、というものだ。
突如、晴也はその場から屹立した。
がたり、と机が揺れる。
「ごめん、僕、ちょっと先に帰る」
「やっぱ具合悪いのか」
「そんなところ」
「おお、わかった。
んじゃなー」
細川の仕草だけが、非日常とはかけ離れた、
平凡だが安寧な気分にさせた。


