崩壊とは、ある意味でこのことをいう。
すっかり疲弊し切って、晴也は部室のいすに腰をかけた。
「……そういえば」
ふと、晴也はいく日か前の、鈴木の事件を想起した。
「思ったんですけど」
「うん?」
「ちょっと、気にかかることがあるんです。
昨日の鈴木さんの、あの怖がりようのことなんですけど」
「あれが、どうかしたか?」
「なんか、なんていうんですかね。
幽霊を怖がってたというより、なんか、
先輩と花子さんを怖がってたように見えたんです」
鈴木の恐懼の視線。
あれは確かに、何かがいたはずの教室ではなく、吉郎と花子に向けられていたのだった。
「悪く言っちゃうと、たしかに先輩はちょっとヤンキーっぽいし、初対面の人は怖がるかもしれません。
けど、どう見ても穏やかな雰囲気の花子さんまで怖がってるなんて、なんか不自然だなー、っておもったんです。
それに、あの、浅はかな考えなんですけど、霊が憑依するとか、よく言いますし……」
しん、と賑やかでかつ騒々しかった部室が静まり返る。
花子は息を呑んだ。
「それって、晴也くん。
勝手な推量で申し訳ないんだけど」
「もしかして、鈴木さんに霊がとり憑いた、って言おうとしとったか?」
吉郎が石を投じる。
晴也は自分が推測できる限りに数日前の状況を回想し、
科学分析ではまず不可能な事柄に、力量を尽くして発想を飛躍させる。
「ーーーはいっ……」
晴也の返事に、ホモふたりが顔を見合わす。
晴也が気にかかったことはもう一つある。
霊的関係者でもある二人を恐れる理由は、鈴木にはない。
例のように、吉郎のみに恐れを持っていただけでなく、花子にも鳥肌を立てていた。
だから、こう考察したのだ。
鈴木が恐れていたのは、不良だとか美少女だとかいうものではなく、
霊的関係者である、陰陽師と寺の子だ。


