「視えるか?」

 問われて、晴也は首を縦に振った。

「嫌な予感がする、って感じの風景ですね」

「まさにそうやな」

 吉郎が呪符を手にしたまま教室を徘徊する。

新入部員二人も、やらぬよりましというように、教室を探索し始めた。

「さっきの悲鳴、女の子の声でしたよね」

 花子が呻吟する。

「あの、不審に思ったんですけど」

「どした?」

「あんな甲高い悲鳴、女子高生でも出せないと思うんです。

それに悲鳴にも聞こえましたけど、なんだが、怒鳴り声にも聞こえて」


その刹那に、


「う」


と、怯えをたっぷりと含んだ声がどこからか零れた。女子生徒だろうか、やたらと声紋が高い。

「誰や?」

ひときわきつい雰囲気をまとわせ、吉郎はずんずんと教卓まで歩み寄り、軽く前後に揺らした。

「ひっ」

教卓の内側に隠れていた人物が、恐懼して渇いた悲鳴を漏らす。

なにかに恐れおののいて震撼しているのは、一年生用のスリッパを履いた丸っこい体つきの女子生徒である。

図体の割に目は小さく、足も短い。唇は気味が悪い紫色で、ぽっちゃりとした体型には不相応なほどに胸部の出っ張りがなかった。悪く言ってしまえば、不細工、を地で行っている。

「す、鈴木(すずき)さん?」

晴也は思わず瞠目するのだった。