晴也は女子の陣の表情を一覧してみる。みな共通して、顔面蒼白であった。

「うっ、うっ、うそ」

「先輩が、ほ、ホモだなんて」

「まじでホモなの?」

「ホモお……!!」

「ホモだわ。だって、だって、あんなもの持ってる男子なんかいないもん!」

「じゃあなに、雅花子は、俗にいう腐女子(ふじょし)なの?」

「うわあ……」
 
 落胆に驚愕、失望に悲哀と、彼女らの表情の変化はさまざまであった。

(部長、あんたって人は、どんだけ女泣かせなんですか)

 しかも、違う意味での女泣かせだ。

 挙句の果てに花子は、

「ということで、先輩!私を学校方士活動部に入部させてくださいっ」

 などと、迫った。

(にゅ、にゅううぶうう!!)

 晴也の背を伝っていた汗が、ますます凍てつく冷たさになる。

 別に入部してほしくないとまでは言わなかったが、再び彼女に会うと、

「細川君とはうまくいっていますか?」

 と輝かしい顔で問われそうで、恐ろしいことこの上ない。

だが、この学校でたぐいまれなホモ仲間を、あの部長がみすみす放っておくはずもなかった。

「ようし、どんと来い!ちょうどかわええ後輩もおるし、これで部員二人や。

ようこそホモ部へ」

(ちょっと待て、いつからホモ部になった!!)

 内心で吉郎の発言にそう返す。

 これはいよいよ、自分の立つ瀬がなくなってきたぞ。そう悟った晴也は、こわやこわやと後退し始めた。

 ……逃げ場を失うとはこのことなのか、不幸にも吉郎が窓越しにこちらを見やったのだった。

「あ、晴也やん」