「いや、最後まで聞けって。

それでさ、バレー部の先輩から聞いたんだけど」

「ん」

 そこで細川が、弓なりに反らせた手を自分の頬に当て、晴也の耳元でこっそりと問いかけた。

「道麻先輩って、ホモなのか?」

 ぎょっとして、晴也は細川を凝視した。

「な、なんでバレー部の先輩が知ってんの?」

「バレー部だけじゃなくて、道麻先輩の学年……二年生全員に知れ渡ってるぜ、その事実」

「そうなのかよ」

「だから、非モテだったんだなあ、あの先輩。

なんだか俺、親しみやすくなってきたわ」

「ホモなのに、親しみやすくなった!?」

「これもバレー部の先輩曰くなんだけどさ、

道麻先輩って、あんな顔してるけど結構優しいんだって?」

「まあ、それは」

 昨日の放課後の事件を想起する。

確かに思い返してみれば、変態だが温厚で、性根は並よりも綺麗だ。

「たしかに、いい人だなあ……とは、思ったけど」

 ぼそりと口にした晴也を、逆に細川が瞳孔を縮めて見つめ返した。

「お前、まさか惚れたの?」

「違うわっ!」

 きしゃあ、と一喝をくれる。

「そりゃあ、確かにいい人だけど、ちょっと性癖が気になってるんだよ、ぼくは」

「性癖って、ホモ?」

「うん」