「なんもなかった?」
「うん…」
「そう。なら良かった」
「……」
「つーかさぁ…なんでお前あんま話さねーの?お前から来てんのに…」
「ごめん、」
また謝ってしまった。
だって、話すことない。
あたしから来たのに…
「ま、そりゃそーなるわな」
起き上がった恭は苦笑い気味で、一息吐く。
珈琲を口に含む恭は、「飲まねーの?普通に冷めてんだけど」そう言って、あたしのマグに視線を向けた。
「うん、飲む」
「淹れなおそーか?」
「ううん、いい」
その場から、立たずに移動する。
恭の隣。目の前のマグに手を伸ばした時、その手はマグに触れる前に恭に掴まれる。
…え?と思ったその一瞬、恭の唇があたしの口を塞いだ。
また、不意打ち。
あたしは何で恭にキスをされているんだろうか。
わからない。
分からなさ過ぎて、頭が混乱する。
さっきまで冷え切ってた唇が何度も重ね合わせてくる所為で熱を帯びてくる。
訳も分からずキスしてくる恭を拒否る事もなく、あたしはただ恭の動きに合わせ、目を閉じた。
こんな事されちゃうと、余計に好きになっていく…
もっと、もっと恭がほしくなる。
何してんの?って言えない自分が情けなくなる。
それほど好き。
唇が重なり合ったまま徐々に身体が押され、あたしの背は床とくっつく。
恭の舌があたしの唇を割り、それに従う様にあたしの口が開く。
そこに入って来た恭の舌と絡まり合うあたしの舌が、止まる事はなかった。
「…んっ、」
不意に漏れてしまったあたしの声に、恭がピタリとやめる。
ゆっくりと目を開けると、あたしの真上に恭の顔がある。
「なんで拒否んねーの?」
「何でって、恭が好きだからだよ。あたしはまだ恭が好き」
まんまとその言葉に乗せられた様に恭に対する気持ちを吐き出していた。
好きすぎて、胸が苦しい…



