改めてみると本当に何もない部屋だった。
目の前に小さなテーブル。その上にはスマホとキーケースとタバコと灰皿。
壁寄りにあるシングルのベッド。
ただそれだけ。
テレビすらもないこの部屋は、なんの為の部屋なのだろうか。
生活感すらないこの部屋。
ひとつだけある部屋の窓に視線を送り、あたしは立ち上がってその窓に手を掛けた。
すんなりと開かない窓。
少し引っかかる感じでガタガタをなりながら窓を開ける。
まだ雪はチラチラと舞い落ちていて、来た時より地面が白くなっていた。
「どした?」
背後から聞こえた恭の声。
後ろを振り返ると同じように背後から外を眺めてた。
「雪…結構降るね」
「あぁ。景色、悪くてごめんな」
申し訳なさそうに謝る恭にあたしは振り返りながら窓を閉める。
「恭?」
「うん?」
テーブルの前に腰を下ろした恭に小さく呟く。
珈琲を口に含む恭はゆっくりと視線をあたしに向けた。
「どうしてここに居るの?あのマンションは?」
「あー…」
語尾を伸ばしながら苦笑いをする恭は何故か悲しい笑みを見せる。
聞いちゃいけなかったんだろうか。
恭のプライバシーに関わる事を聞いてはいけなかったんだろうか。
恭の手が向かう先はタバコの箱。
そこから一本取り出し、口に咥えた。
「ご、めん。なんでもない…」
「いや、」
「……」
そう言って恭は火を点けたタバコの煙と一緒に小さく言葉を返す。
「あるよ。向こうのマンションも。言わなかったっけ?あのマンションは窮屈だって、」
「……」
聞いた事はある。
恭はあのマンションにはあまり帰ってないと言っていた。
窮屈だって、そう言ってたのを思い出す。



