「待って、あたしも行く」


駆け寄って、お姉ちゃんに言うと小さくため息をつかれた。


「行くって、…でもアンタ」


チラッとお姉ちゃんの視線が恭に向く。

そのまま軽く頭を下げたお姉ちゃんに向かって、恭も同じく頭を下げた。


「大丈夫だから!ね、だから一緒に行く」

「……」

「ほら、どんな所に住んでるのか見てみたいし。行って住む前にあたしも見たいしさ」


そんな事、実際は考えてなんかなかった。

お姉ちゃんと住もうなんてこれっぽっちも思ってなかった。


ただ、なんとなくお姉ちゃんが気になって、咄嗟についた言葉だった。


呆れた顔をしたお姉ちゃんの手を引いて、丁度来た電車に乗り込む。

ただお姉ちゃんはボンヤリと窓の外をずっと見てた。


得にこれと言って話す事なんてなかった。

お母さんの事を話そうと思ったけど、何故かそんな事、話す勇気もなくただあたしまでもボンヤリと景色を眺めた。


「…ねぇ、アンタほんとに良かった訳?」


暫く経って、重い瞼が閉じようとした時、聞こえてきたお姉ちゃんの声に視線を向ける。