桜廻る




「これで頭冷やしな」





シャー……っと、冷たい水が降ってくる。


お握りを守るように抱きしめ、耐えた。


ぐっと唇をかむと、かみ過ぎたのか、血が滲んでくる。


数分後、二人の足音は、笑い声と共に消えていった。


そっと扉を開け、目の前の鏡に映る自分を見る。


……酷い顔だ。


悔しくて悔しくて、涙が出てきた。






(私は……弱い)






せっかく土方が作ってくれたお握りは、台無しになっていた。






(ごめんなさい、土方さん)






罪悪感が雅を襲うが、構わずそれをゴミ箱に入れる。


雅は、“具合が悪い”と言って、早退する事にした。


教室からカバンを取ると、すぐ家へ帰ったのだった。