お握りを拾おうと、床にしゃがみ込む。
その途端、杏奈は雅の背中を蹴った。
激痛が走り、顔を歪ませる。
「あんたうざいんだよ!さっさと学校やめろよ」
雅の背中に次々と罵声を浴びさせる、杏奈や他の女子達。
じわりと涙が浮かんでくる。
お握りをパッと掴むと、雅は立ち上がって教室を出た。
「待てよ!」
(や……ばい…っ!)
後ろから、バタバタと足音が聞こえてくる。
必死に逃げるが──
場所が、悪かった。
そこはトイレ。
一番奥の個室に入る。
「バカじゃん、桜川。何でここに逃げんの」
「友梨、ホース」
扉の向こう側にいるのは、杏奈と、もう一人は若松友梨(わかまつゆり)。

