「ちょっと。ちゃんと答えなさいよ。やってくれた?」
「あ……」
だんだん低くなっていく、杏奈の声。
唇も震えて、何も言葉が出ない。
昨日は、土方の事もあって、すっかり忘れていたのだ。
杏奈の宿題どころか、雅は自分の分もやっていない。
小さく首を振る。
その途端……。
ガツンッ!
という音が、教室中に響いた。
雅の机が、杏奈の足によって、倒されたのだ。
ビクッと雅の体が縮まり、教室はシーンと静まり返る。
「ねぇ。あんたさ、私に逆らえばどうなるかくらい、知ってるでしょ?」
「は……い…っ」
「五千円。出して」
震える手を、カバンに入れる。

