桜廻る





「お父さん!」




父の元へ駆け寄った。


伝えたい事があるから。





「お父さん、私──」





しかし言葉にならず、変わりに涙が溢れ、頬の上を滑り落ちた。


父は柔らかく笑いながら、雅の手を握る。


優しくて、暖かくて……大きな手だった。


そして……


輪を越えると、ゆっくりとその手を離した。





“おめでとう”





最後にもう一度、そう言いながら。


ふっと、輪が消えた。


再び静寂が漂う。


すると……時猫が、雅に近付いてきた。