「お母さん!」 そう叫ぶと、透けた手で、母はもう一度雅の頭をなでた。 「雅?生まれてきてくれて、ありがとう。お母さんの、自慢の娘……」 「お母さん……っ」 「雅の中で、これからも生き続けるから」 「おかあ……さん……」 「これからもたくさん、山があるだろうけど……雅なら越えられるから。だから、ちゃんと自分を信じて」 涙が溢れてくる。 「幸せになるのよ、雅」 母はそう言葉を残し……ついに、姿を消した。 まるで、さっきまでいたのが嘘のようだ。