八重は思わず、雅を抱きしめた。
泣きわめく雅と、拳を握る斎藤。
……懐に入っている櫛。
それは、ひまわりの柄が付いた……土方からもらった、大切な櫛。
それを握りしめると、涙がもっと溢れた。
その光景を、大小の鈴を首に付けた一匹の白猫が見ていた。
時、記憶、命を操る……時猫。
じっと雅達を見つめていると、時猫の元に、桜の花弁が一枚舞い降りる。
すると時猫は、金色の瞳を僅かに揺らせた。
大きくて丸い、フラフープのような輪を浮かべると、花弁と共に……スッとそこに吸い込まれるように消えていく。
チリン……
鈴の音が響いたが、悲しみに浸る雅達の耳に入らなかった。

