桜廻る





雅は思わずその方向を見ると……八重が、少しずつこっちに近づいてきていた。





「ご苦労様……大丈夫?」


「うん、私は全然」





そんな会話を時尾と八重は交わす。


そして、八重は雅の方を見た。


八重は微笑んで、雅に頭を下げた。


雅も慌てて会釈する。





「ちょっといいですか?」


「え……っ?」





顔を上げると、八重が雅に向かって手招きをしている。


背を向けて歩き出した八重を、雅は追いかけた。


しかし、ハッとして時尾の方を向く。





「すみません!少し抜けます!」




時尾は、気にしてないというふうに、にっこりしながら頷いた。