桜廻る





「それでそいつが、“桜川が危ない。お前あいつの男だろ?だからお前が守れ”……とか言ってな」


「……え?」


「そいつに引っ張られて、その倉庫とやらの前について……。気付いたら、そいついなくなってた。それで、お前の声が聞こえたから、入ったんだ」





(──永瀬君だ)





雅は驚きを隠せなかった。


体育倉庫を出た時、陸上部はまだ部活中だったのだ。


それなのに……。


わざわざ家まで走って、土方を呼んでくれたのだろうか。





「そいつには、本当に感謝する。そいつのお陰で、お前を守る事が出来たから……」





(ありがとう……永瀬君)





感謝で胸がいっぱいだった。


そんな事を話しているうちに、二人は玄関の前に立つ。