その声の主は……若松友梨だった。
雅をよくいじめていた一人だ。
悲しげな顔をして、杏奈に近寄る。
「友梨……?」
「私は、杏奈の事大好きだよ。何があっても、杏奈の味方だし……これからも親友だから」
ぽろりと、杏奈の目から涙が溢れ落ちた。
それを隠すように、友梨に抱きつく。
「友梨……っ」
雅は、ほっと胸をなでおろす。
(良かった……)
「だからさ、杏奈。もう、いじめなんかやめよう。……ね?杏奈も分かったでしょ?こんなの続けてるより、他の何かを探した方が、絶対にいいよ……」
杏奈は、また、涙を流し……。
「私達なら、大丈夫だよ」
その友梨の言葉に、小さく頷いた。
……そして。
「ごめん」
最後に、そんな言葉が響いた。
土方もほっとしながら、その場面を見ていた。
“死んで花実が咲くものか”
何があっても、生きなければならない。
──雅は、山を乗り越えた。

