桜廻る





さすがにそれはまずい……。


雅はそう感じて、止めに入ろうとする。


……しかし。


土方は、後数センチの所で、ピタリと動きを止めた。


杏奈は驚いて、土方を見つめる。





「……お前は雅に“やめて”って言われて、やめたか?」


「は……?」


「どうして、自分が嫌な事を人にやる?」





土方は睨みをきかせながら、竹刀を持つ腕を下ろした。





「まぁ確かに、雅は最初、弱くてよく泣いてたがな。その時は、やめてなんて言えなかったんだろう。……だが、こいつは変わったんだ。お前に言い返せるくらい……強くなった」


「……」


「お前はまだ、卑怯な真似を続けるのか?」





杏奈は思わず押し黙る。


その時、側にいた女子が、おずおずと声を上げた。





「杏奈……。私、もうやめるから」





二人のうち一人がそう言うと、背を向けて歩き出す。