さっきの杏奈を思い出し、いつもよりもちゃんと話す事が出来ない。
やがて、パァンッ!という音と共に第一走者が走り出す。
青いバトンは、どんどん次の人へと引き継がれていく。
ドキドキしながらも、自分の番が近付いてくる。
「桜川、次だ」
永瀬は、雅の背を軽く押した。
頷きながら、雅はスタートラインに立つ。
スタンディングスタートの体勢で、その時を待った。
必死な顔で、青いハチマキを付けた先輩が、バトンを持った手を伸ばす。
「がんばっ!」
初めて顔を合わせる、三年生の先輩。
高い位置にポニーテールをしたその先輩は、優しく雅に声をかけると、バトンをしっかり握らせようとした。
……しかし。
カラン……ッ!

