オーランドはスーツのまま、ぼんやりと空をながめた。


10年ぶりに日本の友達から連絡があったと思ったら、それは結婚式の招待だった。


式場の外のベンチで、主役の友人たちが着替え終わるのを待つ。


足元には重たい『引き出物』とかいうやつの袋。


手には、小さな針金でできたかごに入った、飴ちゃん。


手持無沙汰なオーランドは、その飴を口に含んだ。


隣に座っている男の煙草の煙が、不愉快だった。


「なあ瑛、ここ禁煙ちゃうんか。まりあに叱られるで」


手で煙を払いながら言うと、隣に座っていた男……黒髪に、黒い目をした岡崎瑛は、スーツから携帯灰皿をとりだした。


「吸うか?」


「いらん」


昔は銀髪に紫の目をしていた彼は、今は普通の日本人に化けている。

そう、例のジャパニーズ忍者は、今ではただの一般人。


「瑛さん、オーリィ、お待たせ!」


そう言ってスタッフ用の出口から正面へ回ってきたのは、まりあ。


かつて夢見姫と呼ばれた、今でも可愛らしい女性だ。


長い黒髪が、さらさらと風に揺れた。