紅蓮の腕〈グレン ノ カイナ〉~六花の翼・オーランド編~



「ドラゴンだわ……!」


アリスの声がした。

遠のいていく意識の中、コートニーはそれを聞いて、なんとか自分を奮い立たせる。


もう、オーランドの悪魔の力は使わなくていい。


だけど手はつないだまま、コートニーは目の前の伝説の生き物に、語りかけた。


「我らが王……」


ドラゴンは答えない。


いや、言葉など、持たないのかもしれない。


呼び出したはいいけど、このドラゴン、私の言うことなんか聞いてくれるのかしら?


不安に思ったコートニーに、オーランドが言う。


「キミなら……大丈夫や。

この中の悪魔が従ったほど、キミは魅力的なんやから」


……それは悪魔の宿主であるあなたがエッチだったからでしょ。


ドラゴンに私の外見なんか通用する?


中身は誇れるものなんか、なにもない。


でも、信じてやってみるしかないのね。


「王よ、お願い。

彼を止めて。あの火を消して……」


ドラゴンはカートの方へ鎌首をもたげる。


「同じ一族なの。

殺さないでいいの。

お願いします、止めるだけでいいから……」


果たして、自分より大きな力を持つカートを、ドラゴンは止めてくれるだろうか?


ドラゴンも子孫が可愛いのかしら……。


不安は大きくなっていくばかりだが、コートニーはドラゴンの紺碧の体についた、サファイアのような瞳を見つめて、祈った。


やがて。