「私と契約した、悪魔さん」
彼女はオーランドの契約呪文を指でなぞる。
「お願い。力を貸して。
あの巨人たちと、カートを止める力を……」
右腕が、手首からひじ、上腕へと赤く染まっていく。
ただの赤じゃない。
まるでこの世のすべてを焼き尽くす炎のような、紅蓮に……。
腕が、身体が、膨張していく。
脳が、侵されていく。
初めて悪魔を吸収したときのような、細胞の一つ一つが黒く染まっていくような感覚。
それさえも、徐々に遠くなっていく。
コートニーの顔が、わからなくなっていく。
破壊したい。破壊したい。破壊したい。
そんな思いだけが、浮かんでは消え、浮かんでは消える。
(あかんで……。
ちゃんと、ご主人さまの言うことを聞くんや)
オーランドは必至で、最後の抵抗を試みる。
(お前さんを吸収してしまってから、僕はすべてをあきらめてきた。
あたたかい家庭も。進学することも。電車の運転手になることも)
そう……すべてをあきらめてきた。
本当は誰よりも自分が嫌いで、自分の価値なんて髪の毛の一筋ほどもないと思っていた。
自分なんか生まれなければいいと、何度思ったことか。



