「手を出さなくていいよ、ナンシー!」
金と黒のオーラに握りつぶされたはずのカートの声が響く。
巨大な指の間から黒い煙のようなものが漏れたと思うと、それは一瞬で、内側から悪魔のオーラを突き破り、破裂させた。
微笑む彼の隣には、いつの間にか、彼の黒豹がいた。
「さすがやな……!」
「君も、なかなかやるね」
カートは片手にぶら下げていたペンタグラムを、ジャケットの内ポケットにしまう。
そうだ、クライドの仇を討つこともそうだが、あのペンタグラムを奪還しなくては。
あれに眠る力がどれほど強大かは知らないが、カートが持つ限り、コートニーの危険が増す。
「仕方がないな。
僕に従順になってくれれば、君も悪いようにはしないのに……。
ナンシー、もういいかい?彼を殺してしまっても」
ナンシーに流された視線に、コートニーの背が震える。
その温かみをまったく感じさせない非情な視線は、彼女が誘拐された時のものと同じだったから。
「プリンスのご意志とあらば」
せっかくの研究材料がなくなってしまうのは惜しいけど、仕方がない。
ナンシーはそんな表情でうなずいた。
「だってさ……!」
カートは満足げに笑うと、その足元に魔法陣を呼び出す。
そこから、夜の闇よりも黒い膨大な煙が、吐き出された。
「僕のプリンセスに手を出したことを後悔するがいい!」