そしてすぐ、真顔になってひざをつく。
目の前に倒れたクライドの、呼吸をたしかめるために。
「……あかん、心肺停止状態や」
オーランドは悲しそうに顔をゆがめ、背後の白魔法師の群れに向かって叫んだ。
「アリス!フェイ!頼む、クライドを助けたってくれ!」
名前を呼ばれた二人は一瞬顔をこわばらせたが、クライドを放ってはおけないと思ったのか、ゆっくり立ち上がりと近づく。
彼らがクライドに寄り添うと、オーランドは自分の右手に話しかける。
「おい、僕の右腕。
……こんな芸人、日本におった気ぃするな」
あれは、「おい、俺の筋肉」だった。
ツッコんでくれる者はいないので、自分で流す。
コートニーにキスをされてから、暴れていた悪魔がおとなしくなっていくのを、オーランドは感じていた。
さっきまでは、細胞のすべてが怒りに染まり、心のコントロールが利かなくなっていたのに。
「コートニーを気に入ったんか?」
もちろん、返事はない。
「……なあ、あのプリンスに使われるより、戦った方が楽しそうだと思わんか?」
ぴくりと、自分の意思に反して指先が揺れた。
どうやら、自分の中にいるのは、とても破壊や戦闘を好む悪魔らしい。
「交渉成立やな」
ニッと笑うと、オーランドはバルコニーにいるカートを見上げる。
跳躍で、あそこまで飛べるだろうか?
そう思っていると、コートニーが服のすそをぐいぐいと引っ張った。