夜明けを待たず、二人はアリスのアパートからそっと離れた。


行く先は、オーランドのアパート。


敵にも味方にも見つかる可能性は高いが、逃げるにはそれなりの準備が必要だ。


ナンシーがたずねてきたとき、カギを開けっぱなしにしてきてしまったが、アパートは荒らされず、無事な状態だった。


オーランドは財布とパスポートだけを持ち、コートニーにTシャツとカーディガンを与える。


彼女はそれに着替え、スカートの下のパ二エを脱ぎ捨てた。


ボリュームを失ったそれは、ただの黒いスカートと化す。


中途半端な長さになってしまったそれを、コートニーは惜しげもなく、ハサミで切り裂いた。


わざとすその糸を出し、オーランドのTシャツのすそから少しのぞく程度の長さにそろえる。


ブラウンの巻き毛を後頭部で一つにしばり、首や耳をさらけだした彼女は、すでに立派なパンク少女へと変貌を遂げていた。


「カートに与えられたもので、唯一この服装だけは好きだったわ」


コートニーは脱ぎ捨てたコルセットやパ二エをながめる。


なるほど、あの王子様の趣味だったのか。
オーランドは妙に納得した。


「でも、こっちの方がラクね」


「うん、僕はこっちの方が好きやな。

きれいな足が、しっかり見えるし」


「まあね、足がキレイなのは否定しないわ」


コートニーはいつもの調子に戻り、不敵に笑った。


(……照れるコートニー、もう少し見たかったんやけどな)


どうやら、まだ自分は女たらしとして未熟なようだ。

オーランドは苦笑し、コートニーを部屋の外へ連れ出した。