オーランドの様子に気づき、アリスが駆け寄る。


「オーランド!
大丈夫なの?」


「うん、だいぶ良くなったわ」


オーランドは汗だくの顔で、力なく笑う。


まだ痛みが残っていることは明白だった。



それでもオーランドは立ち上がる。


前方では、フェイとクライドが、ゆっくりとナンシーを捕獲しようと近づいていた。


そのとき。


『ヘマをしたね、ナンシー』


どこからか、不気味に響く男の声が聞こえ、全員が動きを止める。


「誰だ……うわっ!」


クライドとフェイの前に、一瞬で魔法陣が現れた。


その色は、コートニーの瞳と同じ、赤紫色だった。


魔法陣はまるで太い柱のように、強大な魔力を吐き出す。


「……プリンス……!」


ナンシーが呼ぶ。

コートニーが青ざめ、オーランドの袖をつかんだ。


「早く……っ、早く、みんな逃げて!」


コートニーの叫び声が響いたとき、その男はすでに、魔法陣の中から姿を現していた。


「ごきげんよう、可愛いプリンセス・コートニー。久しぶりだね」


魔法陣から現れた彼は、コートニーににこりと笑いかける。


漆黒の髪はつややかで、その白い肌を病的に見せた。


瞳はコートニーと同じ、赤紫色。


つんとした鼻に、薄い唇の端正な顔立ち。


スーツの上にフロックコートという、まるで昔の貴族のような出で立ちの彼は、プリンスと呼ばれるにふさわしい外見をしていた。


その傍らには、黒い豹が寄り添っている。
彼専属の悪魔だ。