暗い地下の部屋で、蝋燭の灯りだけがゆらゆらと揺れる。


ひんやりとした室内は湿気がこもっていて、自分の肺の中にまでカビが生えそうだ。


オーランドはこの部屋に来るたびに、そう思ってうんざりした。


実際、この地下室は音羽家の蔵の地下書庫と同じくらいの広さがあり、
清潔に保たれているので、カビの胞子がうようよしているとは考えにくいのだが。


電気を引けば良いのに、この古城の地下にある【騎士団(ナイツ)】の本拠地、その会議室は、未だに灯りが蝋燭だ。


古ぼけているけれど豪華な細工が施された長いテーブル、それと揃いの大きなイスに座らされて、もう何時間が経っただろう。


いい加減、腰と背中が痛い。


「……というわけでですねー、夢見姫の獲得に失敗してもーたんですわ。
ホンマすいません。もー許してください」


オーランドは投げやりな口調で、テーブルの対極に位置する中年の男に説明をした。


もう何度同じ説明をしただろうか。


まずは六花の戦いに巻き込んでしまった自分の仲間たちに。

そして、ここイギリスで自分……いや、夢見姫の帰りを待っていた兄に。父に。


日本では自分をテロリストと偽り、ロットンなんてふざけた偽名を名乗っても、あの素直で正直で可愛い仲間たちは誰も疑いもしなかった。


しかし、ここではそうはいかない。