天使の歌


「ディリーさん、只今 戻りました。」

夕方 近くなって、キュティは漸く宿へ戻った。

2人が借りた部屋のドアを開け、ディリーが中に居ない事を知る。

キュティは恐る恐る、ベッドへと向かった。

「……セティ、ずっと寝てるの……?」

1人で呟き、ベッドの脇に在った椅子に座る。

セティは、僅かに口を開け、苦しそうに呼吸していた。

(熱、在るみたい。)

一応 確認しようと手を上げると、セティは僅かに目を開いた。

「……セティ……?」

声を掛けると、彼は熱に浮かされた、潤んだ瞳で、キュティを見つめた。

「……キュ…っ。」

上手く話せないようだ。

それでも彼は、必死に言葉を紡いだ。

「……す…ない……俺、ぼうそ…。」

「…………。」

素直に大丈夫だと言えない。

本当に、暴走したセティは怖かった。

ぎらぎらと飢えた光を放つ、紅い瞳。

“忌み子”なんて、嫌な言葉だと思っていた。

キュティも、言われ慣れた言葉だ。

(……でも、私達は ほんとに……。)

忌み子、なのだ。

本能が、存在が、穢れている――。