「ぐっ!」
背中を もろに壁に打ち付けられて、ネスティは小さな悲鳴を漏らした。
キュティが村を出た後、天使が持つ神力で押さえ付けて居た女と、ネスティは戦闘を開始した。
しかし、普通の村で平和に生きるだけだったネスティが、戦闘慣れした者に勝てる筈も無く、押されているのは彼の方だった。
ネスティは動けず、その場に踞る。
「その傷じゃぁ、もう逃げられないわね。この村は もう用無しだから、火を放つわ。焼け死になさい。」
彼女は そう言い、笑いながら歩き出す。
そして、遠くから煙の匂いが漂って来た。
(……逃げて……キュティ……。)
ネスティは僅かに目を開け、もう此処には居ない少女の姿を、瞳に映そうと試みる。
昔、独りでネスティを生もうとして死にかけていたネスラを助けてくれたのは、キュティの両親だった。
(……僕の命の恩人も、君の両親なんだよ……。)
酷い事 言っちゃって……御免ね、キュティ……。
君は傷付けられても強くて、いつも笑ってて……。
とても優しいから、ああ言うしか無かったんだ。
ネスティは微かに微笑む。
あの時――村が襲われる少し前、キュティに言おうとしていた言葉を、今 此処で。