天使の歌


それから、神力による、兄弟の戦いが始まった。

傷付きながらも、楽しそうに笑うスティと。

血を吐きながらも、果敢に立ち向かうセティ。

いつしかキュティは、樹の腕の中で、茫然と それを見ていた。

(……どうして?どうして、そんなに なって迄 戦うの?)

そう思うけれど、頭では理解していた。

セティは、逃げない。

本音を ぶつけてくれた兄から逃げるような事は、決して しない、と。

(セティ……頑張って。)

気が付くと、キュティは深く深く息を吸い。

歌い出していた。

「キュティ!?」

驚く樹の腕の中から出て、キュティはセティに向かって、ゆっくりと歩いて行く。

キュティの美しい声が集めた神霊(みたま)が、セティの躰の中に入り、彼に更なる力を与える。

しかし、その代償に。

「ぐっ……あああぁぁっ!!」

耐えられなくなったセティの躰は、みしみしと軋み始めた。

それでもセティは、キュティを振り返り。

今迄 見た中で1番、嬉しそうな、綺麗な笑顔を浮かべた。

――有り難う。

そう言うかのように。