セティは吐いている所為で声が出せないのか、ふるふると首を横に振った。

「知られたくないのか?キュティに。」

傍に しゃがみ込んで背中を擦ってやりながら樹が訊くと、セティは こくんと頷いた。

その動作1つ1つが、弱々しい。

こんな子供を天使達が追い掛け回し、傷付けていたなんて信じられなかった。

暫くして、セティの症状は治まった。

荒い呼吸を調えながら、セティは呟いた。

「……病気とか、怪我とか、そうゆうものじゃ、無いんです。」

「どうゆう事だ?何が原因なんだ?」

セティは哀しそうに、微笑んだ。

「何となく……理由は解っていますから。」

しかし その理由を語る事は無い。

「桜とキュティは、この事を知らないのか?」

セティは、はい、と頷くと、樹の服の袖を掴んだ。

強い力だった。

「樹さん……キュティを連れて、早く人界へ帰って下さい。……俺が、死なない内に。」

「君が……死ぬ?」

「自分の躰の事ですから。何となく解ります。……もう、長くは保たないって。だから……キュティを哀しませたくないんです。」

そう言って震えるセティの肩を抱く事しか、樹は出来なかった。