天使の歌


樹に ずるずると引っ張られ、セティは溜め息を ついた。

正直、誰かに触れられるのは、怖い。

家族とキュティ以外は皆、セティを迫害し、暴力を振るう。

だから、触られるのは怖かった。

「はいっ。じゃぁ、着替えて。」

樹は満面の笑みで、セティの胸に新しい服を押し付けた。

溜め息を ついて それを受け取り。

不意に、顔を歪めた。

「どうした?」

「いえ、何でも。」

そう呟いたセティは、手を口に当て、ごほごほと咳き込んだ。

「風邪か?」

樹が手を伸ばした瞬間。

セティは その場に跪き、身を丸めた。

「ごほっ……げほっ……。」

「お、おい、だいじょ――。」

樹は慌ててセティの隣にしゃがみ込んで、セティが吐血しているのを見ると、立ち上がった。

「俺、桜を呼んで来るから!あいつ、多少 医術に心得が――。」

走り出そうとした樹のズボンを、セティは引っ掴んだ。

「うおっ!?」

樹はバランスを崩し転びそうに なったが、何とか体勢を立て直すと、セティを見つめた。

苦しそうに顔を歪めながら、セティは樹を真っ直ぐに見つめていた。